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友達の義父を盗撮した朝

友達の義父を盗撮した。

散歩に出かける彼を待ち伏せて、そ知らぬふりをして後をつけた。

ジョギングに一生懸命なふりをして彼を追い越した。

靴ひもがほどけたふりをして立ち止まり、スマートフォンのシャッターを切った。

ゆるみきった顔。何も警戒していない顔。五十代の男の顔。

鳩よりも平和という言葉が似合いそうなぐらい穏やかな顔。

少しぶれた顔。

私はそれを保存して家に帰った。

 

友達は母と二人で私の住む土地にやってきた。義理の父と三人で暮らすためだった。

母親とよりも父親といる姿をよく見かけたし、お父さんおとうさんといつも言っているので、初めて大人たちに彼と彼女が血縁関係にないことを知らされたときは驚いた。

彼女の両親が離婚すると決まった時、私は何も言えなかった。

言えないまま見送った。私の住む土地は彼女の住む土地ではなくなった。

私と義父が住む土地になった。

 

彼女とメールでやりとりをしているとふっと彼女が漏らした。

お父さん元気かな?

義父のことだとわかった。

彼のことはたまに散歩する姿を見ていた。住まいはおそらく前と同じだろう。

 

私は盗撮した。むかし、一緒に遊んだ家から義父が出てくるのを待って。

友達の義父、しかももう書類上はなんの関係もないおじさんなんて、他人の他人だ。

私は待って、待って、待って、盗撮した。

そして自分の父親のことを考えた。毎日、同じ家で暮らしているがそれだけだった。同じ家にいるのに父親が今、どんな見た目をしているか思い浮かばなかったし、元気なのかどうかもわからなかった。たぶん、仕事に行っているから大丈夫なんだろう。それだけだった。

血のつながらないただの他人となったおじさんを心配するひともいれば、実の父親に対して何も思わない自分もいる。

そんなことを考えながらシャッターを切った。